運動中の疲労の原因は複雑…!細胞レベルで3つの原因を解説

運動生理学

 

激しい運動をした時や、練習の最後の方には身体が思うように動かなくなりますよね。

 

身体を動かそうと思っているのに、思い通りに動かないともどかしい気持ちになりますよね。

 

これまでは、「乳酸が溜まった」とも言うように、運動による疲労は乳酸が原因だと言われてきました。しかし、乳酸意外にも運動中の疲労の原因はたくさんあります。

→関連記事: 「乳酸は疲労の原因??乳酸は疲労物質ではなかった!」

 

では、どうして激しい運動をすると身体が動かなくなるのでしょうか?その原因について詳しく紹介していきます。

 

 

 

この記事を書いた人
中野 卓|スポーツ栄養サポーター

スポーツ栄養サポーター
東京大学総合文化研究科卒業
大学まで20年間競泳選手として活動。
現在はアスリートを中心に栄養サポートを行っている。

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そもそも「疲労」とは?

 

 

まずは、「疲労」とはどのような状態なのかを紹介します。

 

運動生理学的には、疲労は「持続的に筋収縮を行ったり激しい運動を行うことによって、張力と収縮・弛緩速度の低下が生じる状態」と定義されています。

 

簡単に言うと、激しい運動を行って、100%力を出せない状態のことですね。

 

なんとなく身体が重い時なども疲労を感じると言ったりしますが、疲労には種類があり、そうした疲労とはまた違います。

 

疲労の種類については、「疲労には種類がある!運動中の疲労と慢性疲労」で詳しく解説しています。

 

 

 

運動中の疲労の原因

 

 

それでは運動中に疲労が起こる原因として、どのようなことが挙げられるのでしょうか。その原因としては、

 

 

 

1, エネルギー代謝によるもの
2, 神経伝達によるもの
3, 筋収縮のメカニズムによるもの

 

 

の3つに分けられます。それぞれについて詳しく紹介していきます。

 

 

エネルギー代謝によるもの

 

 

私たちの身体は、ATPという生体のエネルギー通過をADPに分解することでエネルギーを取り出し、筋肉を収縮させています。

 

そして食事から摂取した糖質や脂質などを使い、ADPを再びATPに戻しています。

 

ADPをATPに変えるための経路には、大きく3つの種類があります。それが、

 

 

1, クレアチンリン酸系
2, 解凍系
3, 有酸素系

 

 

です。

 

 

 

クレアチンリン酸系は、とても瞬発力があるが、持久力はないタイプ、逆に有酸素系は瞬発力はないが持久力があるタイプです。解糖系はその中間のタイプです。

 

基質 速度 持続力
クレアチンリン酸系 クレアチンリン酸 速い 低い
解糖系 糖質 中間 中間
有酸素系 脂肪 遅い 高い

 

 

激しい運動を行っている時は、クレアチンリン酸系(上図の左)がかなり使われます。クレアチンリン酸は爆発的にエネルギーを取り出せるものの、持久力に乏しいタイプなので、この経路が疲労の原因の1つとして挙げられます。

 

解糖系では、糖質を分解してエネルギーを取り出します。激しい運動をしている時は、この経路で乳酸がたくさん作られます。

 

乳酸は直接疲労の原因にはなりません。詳しくは「乳酸は疲労の原因??乳酸は疲労物質ではなかった!」で解説していますが、エネルギー源としても使われます。

 

しかし、乳酸が筋肉の中で処理しきれなくなると、水素イオンを放出し、筋肉の中のpHが下がります(筋肉が酸性になります)。

 

解糖系は、ホスホフルクトキナーゼという酵素の働きの影響が大きいのですが、この酵素はpHの変化の影響を受けやすく、pHが下がると機能が大きく低下します。

 

そのため、激しい運動を続けていると解糖系からもエネルギーが取り出せなくなり、有酸素系からしかエネルギーを取り出せなくなります。このことも疲労の原因になります。

 

 

 

神経伝達によるもの

 

 

私たちの身体は、脳からの刺激が筋肉に届くことで筋肉が収縮するようにできています。脳の指令を筋肉まで届けているのが、神経細胞です。

 

神経細胞は細胞内外のナトリウム・カリウムイオンの濃度差をうまく使って、筋肉まで電気刺激を届けています。

 

そして筋細胞でも、ナトリウムとカリウムのイオン濃度の違いにより電気刺激を伝達しています。

 

しかし激しい運動をすると、そのバランスが乱れてしまい、電気刺激がうまく伝えられなくなってしまいます。このことも疲労の原因として挙げられます。

 

 

筋収縮のメカニズムによるもの

 

筋肉はアクチンミオシンというたんぱく質が相互作用することで収縮しています。

 

アクチンとミオシンが働くために必要なのが、筋小胞体という組織に閉じ込められているカルシウムイオンです。

 

筋小胞体からカルシウムイオンが出入りすることで、アクチンとミオシンが相互作用できるようになり、筋収縮を起こしています。

 

 

しかし激しい運動を行うと、カルシウムイオンの出入りが悪くなり、筋収縮が起こりづらくなってしまいます。これも疲労の原因となります。

 

 

運動中の疲労はかなり複雑

 

運動中の疲労の原因として主なものを3つ紹介しましたが、それ以外にも脳の温度が上がったり、筋肉に機械的刺激が加わったりと、疲労の原因は様々あります。

 

さらに、「なんとなく身体が重い」というように、慢性的に疲労を感じることもあります。そうした疲労は、今回紹介したような運動中の疲労とはまた違う原因で起こっています

「疲労には種類がある!運動中の疲労と慢性疲労」

 

運動中の疲労の原因を細胞レベルで知ると、疲労を防ぐにはどうすればいいかも見えてきます。実は栄養学的にも疲労を防ぐ方法があります。

 

運動中の疲労の予防について詳しくは「運動中の疲労に効果的な栄養素を徹底解説!疲労の原因から考える栄養アプローチ」の記事で解説しているので、参考にしてください。

 

 

参考文献

Chad et al. (2018) ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations J Int Soc Sports Nutr. 15, 1, 38.

 

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